同じ魚でも、測り方が違えば長さの数字は変わります。魚の長さには「全長」「標準体長」「尾叉長」「被鱗体長」など、いくつもの測り方があり、「体長」という言葉が何を指すかも資料によって違います。
釣り人にとっては、この違いを知らないと「規則のサイズを超えていると思ったのに、実は足りなかった」ということにもなりかねません。
研究の数字を自分の釣果と比べるときにも、どの測り方かを知っておく必要があります。
この記事では、次のことを図解と実際の研究の例で解説します。
- 5つの測り方の違い(どこからどこまで測るか)
- それぞれが使われる場面
- 規則のサイズや論文の数字を読むときの注意点
ひと目でわかる魚の長さの測り方
どの測り方も、口の先(専門用語では「吻端(ふんたん)」)から測り始めます。違うのは、「どこまで」測るかです。
| 測り方 | 英語(略称) | どこまで測るか | 主に使われる場面 |
|---|---|---|---|
| 全長 | Total length(TL) | 尾びれの一番長い部分の先端 | 釣りの規則、多くの魚の資源調査 |
| 尾叉長 | Fork length(FL) | 尾びれの切れ込みの一番奥 | マグロやサバなど尾びれが深く切れ込んだ魚 |
| 標準体長 | Standard length(SL) | 尾の骨(下尾骨)の端。尾びれの付け根あたり | 魚の分類の研究、図鑑 |
| 被鱗体長 | ― | 尾の付け根(尾柄部)で鱗が終わるところ | 日本の水産試験場の調査など |
測り方のポイントとして3つ
- 魚を平らな場所に置いて、口を閉じさせた状態で測定します。
- 下アゴが飛び出ている魚(多くの場合)は、下アゴの先端を基準にします。
- 湿らせたメジャーを魚の直下に置いて「直線距離」で測るのが正確です。※魚の体に沿わせない
鱗がない魚で尾びれが切れ込んでている魚にはマサバが代表例になります。

鱗があり、尾びれが丸い魚としてキジハタの場合だと下の図のようになります。

5つの測り方をそれぞれ解説
全長(ぜんちょう):釣り人に一番身近な測り方
全長は、口の先から尾びれの一番長い部分の先端までの長さです。魚の体をすべて含む唯一の測り方です(Hile 1948)。
FAO(国連食糧農業機関)の資料では、尾びれの長い方の先を体の中心線に寄せて、最大の長さを測る方法が示されています。
日本の漁業調整規則で決められているサイズの制限は、多くが全長です。
たとえば新潟県では「全長15cm以下のイワナ・ヤマメは採捕禁止」です(新潟県)。
フィッシングメジャーを確認する標準体長(ひょうじゅんたいちょう):研究者が使う測り方
標準体長は、口の先から、尾びれを支える骨(下尾骨)の端までの長さです。
尾びれを含めないこの測り方は、魚の分類の研究で標準とされています。
ただし、骨の位置を外から判断する必要があるので、現場ですばやく測るのには向いていません(FAO)。
たとえば、鹿児島大学のカガミダイの研究では、標本の大きさを標準体長で示しています(和田ほか 2021)。
体長(たいちょう):資料によって意味が違う
「体長」は、標準体長の意味で使われることもありますが、資料によって指すものが違う言葉です。
たとえば北海道のマダラの研究では、尾叉長を「体長」として使っています(星野ほか 2017)。
資料で「体長」を見かけたら、方法の説明で何を測ったかを確かめるのが安全です。
尾叉長(びさちょう):尾びれが切れ込んだ魚に使う
尾叉長は、口の先から尾びれの切れ込みの一番奥(一番短い鳍条の先)までの長さです。
FAOの資料では、マグロやサバの標準の測り方とされています。尾びれが硬く、深く切れ込んだ大型の魚にも向いています。
渓流魚の研究でもよく使われます。北海道で行われたイワナのキャッチアンドリリースの研究では、調べた魚の大きさを尾叉長で80.5〜282.5mmと示しています(Tsuboiほか 2002)。
被鱗体長(ひりんたいちょう):鱗の終わりまで測る
被鱗体長は、口の先から、尾の付け根(尾柄部)で鱗が終わるところまでの長さです。FAOの資料でも、標準体長を現場で測るときに、骨の代わりに「最後の鱗」を目印にすることがあるとされています。
ただし、鱗の終わりははっきりしないことがあります。
北海道のマダラの研究では、被鱗体長は尾の付け根付近の終わりの位置を決めにくく、測る人によって値がずれるおそれがあると指摘されています(星野ほか 2017)。
釣り人が気をつけたい3つのこと
1. 規則のサイズは「全長」で測る
漁業調整規則のサイズは、多くが全長で決められています。尾びれを含めずに測ると、規則のサイズより小さく測ってしまいます。
ただし、全長の細かい測り方(尾びれをつまむかどうかなど)は、規則で決められている場合もあります。
地域の規則や漁協の案内で確かめてください。
2. 論文の数字は、測り方をそろえてから比べる
測り方が違うと、同じ魚でも数字が変わります。北海道のマダラの研究では、次の換算式が使われています(星野ほか 2017)。
- 尾叉長(mm)= 1.07 × 被鱗体長(mm)+ 3.72
- 尾叉長(mm)= 0.98 × 全長(mm)+ 1.29
この式で計算すると、被鱗体長50cmのマダラは、尾叉長が約54cm、全長が約55cmになります。
同じ魚なのに、測り方だけで5cm近く違うことになります。換算式はヒレの長さや形が魚種ごとに違うので、他の魚にはそのまま使えません。
3. 正しく測るためのコツ
- 口を閉じた状態で、口の先をメジャーの端に合わせる
- 魚をまっすぐに置き、体に沿わせず直線で測る
- リリースする魚は、濡らした計測マットの上で素早く測る
最後のポイントは、「リリースした魚は生きている?生存率を上げる5つのコツ」でも紹介しています。
空気に出す時間が長いほど、魚は弱ってしまいます。
活かし水くみを見るよくある質問
Q. 釣りの記録や釣果自慢で使うのはどの測り方?
全長がおすすめです。規則のサイズと同じ測り方なので、持ち帰るか逃がすかの判断にもそのまま使えます。
Q. 尾びれが切れている魚はどう測る?
全長は尾びれの先まで測るので、尾びれが切れていると実際より短くなります。規則のサイズに近い魚なら、逃がす方を選ぶと安心です。
筆者は共食いで尾びれが切れタチウオ
Q. 論文に「体長」とだけ書かれていたら?
論文の「方法」の部分で、何を測ったかを確かめましょう。英語の略称(TL、SL、FL)が書かれていれば、それが手がかりになります。
尾叉長を「体長」と呼んでいる研究もあります。
Q. 全長と標準体長はどのくらい違う?
魚種や大きさで違います。たとえば福岡県のマゴチの調査では、全長147mmの個体の体長が126mmと記録されています(濱田・徳田)。
この資料の体長が標準体長の意味だとすると、全長の約14%が尾びれの分にあたります。
まとめ|数字を見たら「どこまで測ったか」を確かめる
魚の長さは、どこまで測るかで数字が変わります。
- 全長:尾びれの先まで。釣りの規則で多く使われる
- 尾叉長:尾びれの切れ込みまで。マグロやサバ、渓流魚の研究などで使われる。
- 標準体長:尾の骨の端まで。魚の分類の研究で使われる。
- 被鱗体長:鱗の終わりまで。終わりの位置がわかりにくいこともある
- 体長:資料によって意味が違うので、方法を確認する
釣った魚を持ち帰るか逃がすかは、全長で判断しましょう。研究の数字を使うときは、測り方をそろえてから比べることが大切です。
参考文献
- FAO「Section 3: The Measurement of Fish and Shellfish」
- Hile, R.(1948)Standardization of methods of expressing lengths and weights of fish. Transactions of the American Fisheries Society 75: 157–164
- 星野 昇ほか(2017)「北海道周辺海域におけるマダラの年齢組成」北水試研報 92: 33–42
- 和田英敏・伊東正英・本村浩之(2021)「薩摩半島南西沖から得られた鹿児島県初記録のイトヒキカガミダイ,および近縁種であるカガミダイの標徴の再評価」Ichthy 13: 43–49
- Tsuboi, J., Morita, K. & Matsuishi, T.(2002)Effects of catch-and-release angling on growth, survival and catchability of white-spotted charr in wild streams. 日本水産学会誌 68(2): 180–185
- 濱田豊市・徳田眞孝「マゴチの雌雄の出現と成長(予報)」福岡県水産海洋技術センター 豊前海研究所
- 新潟県「内水面(河川・湖沼)における特別採捕許可申請について」